
AMRとAGVの最も重要な違いは走行方式にあります 。AGV(Automated Guided Vehicle)は無人搬送車として、磁気テープ、ビーコン、反射板などの誘導体を床面に設置し、あらかじめ決められたルート上のみを走行します 。一方、AMR(Autonomous Mobile Robot)は自律走行搬送ロボットとして、センサーやカメラを搭載したSLAM技術により、周囲の環境を認識しながら自分で最適なルートを生成して走行します 。
参考)https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02533839.2022.2101542
この違いにより、AGVは決められた経路を正確に走行する一方で、ルート上に障害物があると停止してしまいます 。対してAMRは、人や障害物を検知すると自動的に回避ルートを設定し、柔軟な搬送を継続できます 。
物流現場における実際の運用では、この走行方式の違いが作業効率に大きく影響します。AGVは安定した搬送経路が確保できる環境で威力を発揮し、AMRは人の往来が多い現場や頻繁にレイアウト変更が発生する環境に適しています 。
導入準備の工程も両者で大きく異なります 。AGVの場合、磁気テープなどの誘導体の設置作業と走行ルートの詳細な設計が必要で、広い倉庫や複雑なレイアウトの現場では設置に多くの時間を要します 。レイアウト変更時には誘導体の設置し直しが必要になり、メンテナンス作業も継続的に発生します 。
参考)https://aspina-robotics.com/ja/column/amr-column-001/
AMRの導入では、物理的な誘導体の設置は不要で、環境地図を作成するだけで既存現場に導入できます 。しかし、人と協働するための作業分担の明確化や、マップデータの作成・調整に時間を要する場合があります 。レイアウト変更時は誘導体の再設置ではなく、マップデータの再構築で対応できるため、運用面での負担は軽減されます 。
参考)https://www.teraokaseiko.com/jp/l/logistics/column/detail/20230615051647.html
特に物流業界では、季節変動やキャンペーン対応でレイアウト変更が頻繁に発生するため、この準備作業の違いは導入判断に大きな影響を与える要素となります 。
技術的な能力面では、両者は設計思想から根本的に異なります 。AGVは単純なタスクの実行に特化して設計されており、決まったルートでの高速・高精度な搬送を得意とします 。搬送精度はAMRより高い傾向がありますが、柔軟性に限界があります 。
AMRは人の手から非生産的なタスクを減らすことを念頭に設計され、機械学習機能によって最適な走行ルートを分析し、新しい状況に遭遇した際に学習して効率性と正確性を向上させます 。複数のタスクに対応できる汎用性を持ち、人との協働作業空間での運用が可能です 。
最近では、AI搭載AGVも開発されており、従来のAGVの制約を克服した製品も登場しています 。しかし現時点では、AMRの方が環境適応能力や学習機能において優位性を保っています 。
導入コストは両者で大きな開きがあります 。AGVの一般的な価格帯は200-500万円で、牽引型は200-400万円、パレット型は300-600万円程度です 。シンプルな構造のため、比較的低コストでの導入が可能です 。
AMRの本体価格は500-1000万円と幅があり、スペックにより100-500万円の範囲で変動します 。周辺機器を含めた導入費用は約1,500-2,000万円程度になります 。高度な技術を搭載しているため、初期費用が高額になる傾向があります 。
参考)https://www.mirabot.co.jp/column/robotics/amr-agv
ランニングコストでは、AGVは誘導体の定期メンテナンスが必要ですが、AMRはソフトウェア更新やより複雑なメンテナンスが発生します 。ただし、最近ではサブスクリプション型のAMRサービスも登場し、初期投資を抑えた導入も可能になっています 。
物流現場での実用性は、現場環境により大きく異なります 。AGVは環境が安定し、走行ルートが固定された倉庫や工場で決まった作業を繰り返す業務に最適です 。製造業の生産ラインでの部品搬送や、食事・リネン類・医薬品の病院内搬送などで高い実績があります 。
参考)https://www.mdpi.com/2076-3417/14/17/7965
AMRはレイアウト変更が頻繁な現場や障害物が多い環境で優位性を発揮します 。EC需要増加による物流倉庫のピッキング業務では、人との協働によりピッキング作業の効率化を実現しています 。製造業でも、従来人手で行っていた工程間搬送や部品補充作業での活用が進んでいます 。
実際の運用データでは、AMRは搬送速度にばらつきが生じやすく、障害物回避を優先するため一定速度の維持が困難な場合があります 。しかし、作業者の移動負担を大幅に軽減し、省人化効果は高いと評価されています 。
参考)https://amr-guide.com/amr/amr%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88-%E8%B2%BB%E7%94%A8-%E5%8A%B9%E6%9E%9C/