「薬剤料が安くなれば変更してOK」と思っていると、実は査定対象になります。
関連)https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/6996
薬剤師法第23条により、薬剤師は処方箋に記載された医薬品を、処方医の同意なく変更して調剤することは原則として禁じられています。 これは薬剤師なら誰もが知る基本ですが、現場では「後発品への変更ならOK」という感覚で判断が雑になりやすいのが実態です。
関連)https://stu-ge.nichiiko.co.jp/store/mpi_documents/file/dcec8996fd516ad6f652938b9e7f5189.pdf
重要なのは、「変更不可」欄に「✓」や「×」が記載されているかどうかです。 この確認を怠った場合、保険薬局側の過失となり、保険請求の査定・返還指導の対象になります。厳しいところですね。
関連)https://med.sawai.co.jp/topics/substitution/pdf/qa_substitution.pdf
厚生労働省が公開している「保険調剤確認事項リスト」には、不適切な変更調剤の具体例が列挙されており、指導・監査の際のチェック項目になっています。
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/001532888.pdf
厚生労働省「保険調剤確認事項リスト(令和7年度改訂版)」:変更調剤の不適切事例と確認ポイントが一覧で確認できます
変更調剤で最も誤解されやすいのが、「薬価」と「薬剤料」の違いです。 薬価は1錠あたりの単価ですが、薬剤料は処方量×薬価で算出される総額です。つまり規格が変われば、1錠単価が安くても薬剤料が高くなるケースがあります。
関連)https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/6996
たとえば「50mg錠1錠」を「25mg錠2錠」に変更する場合、25mg錠の薬価が50mg錠の半額未満でなければ薬剤料は上がります。 この判定を「薬価で確認すればいい」と思い込んでいると、気づかないうちにルール違反になります。
関連)https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/6996
同一規格・同一剤形への変更の場合は例外です。 この場合は薬剤料が高くなっても変更調剤が認められています。つまり規格・剤形の変更を伴うかどうかが、判断の分岐点です。
関連)https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/6996
| 変更のパターン | 薬剤料UP時の変更可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 同一規格・同一剤形への変更 | ✅ 変更可 | 銘柄変更のみ |
| 含量規格が異なる後発品への変更 | ❌ 変更不可(通常時) | 需給逼迫時は別途ルール適用 |
| 類似する別剤形の後発品への変更 | ❌ 変更不可(通常時) | 患者同意があっても原則不可 |
m3.com「後発医薬品の変更ルールを解説」:薬剤料アップや別剤形への変更調剤の可否を表付きで詳しく解説しています
2024年3月15日、厚生労働省は医薬品の需給逼迫状況を踏まえ、変更調剤に関する緩和措置を事務連絡で通知しました。 この通知は「当面の間」の取り扱いとして、従来は認められていなかった先発医薬品への変更や、薬剤料が変更前を上回る変更調剤を一定条件のもとで認めるものです。
関連)https://media.shaho.co.jp/n/n8e9785b66ae7
緩和措置の適用には条件があります。 「医薬品の入手が限定されること等により必要量が用意できないやむを得ない状況」であることが前提で、変更後には処方医への情報提供が必要です。無条件に何でも変更できるわけではありません。
関連)https://www.med.ts-pharma.com/di-net/ts-pharma/pickup/pickup83.pdf
情報提供の記録が残っているかどうかは、指導監査の際に確認されます。 対応した内容・日時・方法を調剤録や処方箋に記載しておくことが、リスク管理の基本です。記録は必須です。
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/001532888.pdf
社会保険旬報「銘柄名処方の変更調剤ルールを当面緩和」:2024年3月の通知内容を解説しています
近年、病院と薬局が事前に合意書を締結し、一定の変更を疑義照会なしに行える「疑義照会簡素化プロトコル(PBPM)」を導入する医療機関が増えています。 このプロトコルは、チーム医療の推進を目的として厚労省が後押ししている枠組みです。
関連)https://stu-ge.nichiiko.co.jp/mpi_documents/1092
ただし、プロトコルが締結されていても「疑義照会をせずに変更してよい」わけではないケースがあります。 プロトコルに基づく変更であっても、適応症や用法用量を逸脱した変更は認められません。これが条件です。
プロトコルの内容は病院ごとに異なります。 「A病院のプロトコルでできたから、B病院でも同じはず」という思い込みが、変更調剤トラブルの原因になります。薬局ごとの合意書の内容を必ず確認してください。
関連)https://www.hyo-med.ac.jp/department/phrm/medicals/jizenpurotokoru.pdf
兵庫医科大学病院「院外処方箋の変更調剤における事前プロトコル」:実際の病院プロトコルの記載内容を参照できます
一般名処方の場合は「どの薬でも出せる」と思われがちですが、実は先発品への変更で規格・剤形を変えることはできません。 これは意外と知られていないポイントです。一般名処方で先発品を選ぶ際は、処方された規格・剤形と同一のものを選ぶ必要があります。
関連)https://yakuzaishi.luckysundiary.com/kanri/henkoutyouzai3/
たとえば「〇〇錠50mg」という一般名処方に対して、先発品として25mg錠を2錠で対応しようとすると、これは規格変更にあたりルール違反です。 薬価が一番高い先発品でも交付可能ですが、規格・剤形の変更は認められません。
関連)https://yakuzaishi.luckysundiary.com/kanri/henkoutyouzai3/
後発品への変更なら規格変更も可能ですが、薬剤料の確認が必要です。 一般名処方だからといって変更に関するチェックが不要になるわけではありません。意外ですね。
関連)http://www.kyotofuyaku.or.jp/data/data1/8377-1.pdf
変更調剤後にトラブルが起きた事例として、免疫抑制剤「グラセプター」を誤って同成分の「プログラフ」に変更調剤してしまったケースが報告されています。 この2剤は同成分(タクロリムス)ながら、バイオアベイラビリティが異なるため、血中濃度に影響が出るリスクがあります。成分名が同じでも変更できない薬があるのです。
関連)https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/20210708trouble.pdf
変更調剤の判断に迷ったとき、成分・剤形・規格の組み合わせをすぐに確認できる医薬品データベース(日医工「Stu-GE」や沢井製薬の変更調剤Q&Aなど)を手元に置いておくと、実務での対応が確実になります。
関連)https://stu-ge.nichiiko.co.jp/mpi_documents/1091
日医工「後発医薬品の変更調剤ルール(解説編)」:変更可能な範囲と疑義解釈をPDFで確認できます
愛媛大学医学部附属病院「保険薬局における変更調剤トラブル事例」:実際に起きたトラブル事例と注意すべき薬剤が掲載されています