Grade3のMCL損傷でも、約80%のケースは手術なしの保存療法だけで競技に復帰できます。
膝内側側副靱帯(MCL)損傷は、スキー・サッカー・柔道など外反ストレスが加わるスポーツで高頻度に発生する靱帯損傷です。 重症度はGrade1〜3に分類され、理学療法士・トレーナーが適切なプロトコルを選択するための基盤となります。
関連)https://note.com/l_fittraining/n/n59fb33884606
分類ごとの特徴は以下の通りです。
| Grade | 損傷程度 | 外反ストレステスト | おおよその固定期間 |
|---|---|---|---|
| Grade 1 | 微小断裂(伸長のみ) | 0°・30°ともに陰性 | 1〜2週 |
| Grade 2 | 部分断裂 | 30°で陽性、0°で陰性 | 3〜5週 |
| Grade 3 | 完全断裂 | 0°・30°ともに陽性 | 4〜6週(保存が原則) |
Grade3であっても、MCL単独損傷であれば原則として保存療法が選択されます。 これは意外に思われがちですが、MCLは血流が豊富で自己修復能力が高い組織であるためです。
関連)https://www.rakuwa.or.jp/clinic/marutareha/reha_shikkan/mcl_damege.html
外反ストレステストは0°と30°の両角度で必ず実施することが基本です。30°屈曲位のみ陽性の場合はGrade1〜2の範疇で、ACL合併損傷の可能性は低いと考えられます。 一方、0°でも陽性となる場合はACLや後十字靱帯(PCL)の合併を積極的に疑い、MRI評価を優先してください。
複合靱帯損傷が疑われるケースは要注意です。
急性期の管理では、腫脹・疼痛コントロールと廃用予防を同時進行で行うことが原則です。 受傷後48時間はとくに炎症が強い時期であり、RICEを徹底しながら患部外のトレーニングを積極的に開始します。
急性期に実施すべき介入は以下が代表的です。
Grade1であれば固定は不要で、疼痛に応じた全荷重が可能です。 Grade2〜3では支柱付きヒンジブレース(外反を制限するもの)を装着し、松葉杖での部分荷重から開始します。
関連)https://www.rakuwa.or.jp/clinic/marutareha/reha_shikkan/mcl_damege.html
つまり、完全免荷を長引かせる必要はありません。
洛和会丸太町リハビリテーションクリニックが公開しているMCL損傷保存プロトコル(PDF)は、急性期から復帰期までの段階が整理されており、臨床現場での参照に適しています。
洛和会ヘルスケアシステム|MCL損傷プロトコール(スポーツ動作)PDF
受傷後3〜6週は靱帯の修復が急速に進む時期です。 コラーゲン量が一定量まで増大するのに概ね6週間かかるとされており、この時期に適切な運動療法を加えることで靱帯の質的な修復を促進できます。
関連)https://note.com/l_fittraining/n/n59fb33884606
回復期の主な運動療法メニューを示します。
CKCエクササイズが優先される理由は、膝に圧縮力をかけながら動かすことで関節の安定性を維持しつつ、MCLへの過度な内外反ストレスを避けられるためです。 スクワットはクォーター→ハーフ→フルと深さを段階的に増やし、痛みや腫脹の翌日残存がなければ次のステップへ進んでください。
関連)https://ikeda-c.jp/byouki/collateralligament.html
これが回復期の基本です。
超音波療法は急性期だけでなく、この回復期においても組織の修復を促進し疼痛管理に有効との報告があります。 物理療法を運動療法と組み合わせることで、単独介入よりも回復スピードを高められる可能性があります。
関連)https://note.com/alive_crane7655/n/n991d407edf2f
受傷6週を過ぎると靱帯強度は大幅に向上しますが、正常な強さに戻るにはさらに時間がかかります。 そのため、復帰判断は「週数」ではなく「機能基準」で行うことが重要です。
関連)https://note.com/l_fittraining/n/n59fb33884606
復帰期のトレーニング内容は以下を含みます。
スポーツ復帰(RTS:Return to Sport)の目安として、患側の筋力・バランス・跳躍能力が健側の90%以上に回復していることが広く推奨されています。 池田医院の臨床プロトコルでは、Y-BalanceやHop Testなどを組み合わせた定量評価がRTS判断の核となることが示されています。
関連)https://ikeda-c.jp/byouki/collateralligament.html
機能基準を満たすことが条件です。
スポーツ復帰後も再発予防のためのテーピング・ブレース装着を継続することが推奨されます。 とくにコンタクトスポーツでは、膝外反を制御するヒンジ付きブレースを復帰後3〜6か月間装着することで、再受傷リスクを下げる実践が行われています。
関連)https://koto-orthopaedics.com/rehabilitation-after-medial-collateral-ligament-injury/
池田医院|MCL損傷の術後リハビリプロトコル詳細(時期別介入内容・RTS基準)
MCLリハビリは膝周囲だけを扱えば十分、と思っている医療従事者は少なくありません。これは盲点です。
上半身・下半身の質量中心のアライメントが乱れていると、膝関節への外反ストレスが増大し、MCLに繰り返しの過負荷がかかり続けます。 たとえば股関節の外転・外旋筋(中殿筋・深層外旋6筋)が弱化している場合、走行時に動的外反(ニーイン)が生じ、リハビリ中にもMCLへの二次的ストレスがかかります。
関連)https://note.com/l_fittraining/n/n59fb33884606
体幹・股関節から介入することが再発予防の鍵です。
具体的には以下のアプローチが有効です。
足関節背屈制限がある選手は、着地時に膝が内側に入りやすいことが知られています。MCLリハビリの中でアキレス腱・腓腹筋のストレッチや足関節モビリティ改善も必ずセットで評価・介入してください。
関連)https://note.com/l_fittraining/n/n59fb33884606
意外な盲点ですね。
最新のエビデンスでは、PRP療法(多血小板血漿注射)がMCL損傷に対して組織修復を促進する可能性が示されており、保存療法でも回復が遅い症例では担当医と連携した上で選択肢として検討できます。
関連)https://note.com/alive_crane7655/n/n991d407edf2f
rehatora.net|膝内側側副靭帯(MCL)損傷のリハビリ治療:保存療法のプロトコル・Grade別介入まとめ