生活習慣病対策で国が進める施策と医療現場への影響

国が推進する生活習慣病対策の最新動向を整理しました。特定健診・保健指導の実施率から2024年診療報酬改定まで、医療従事者が知っておくべき制度変化とは何でしょうか?

生活習慣病対策で国が推進する施策と医療従事者が知るべき現実

特定健診の受診率は目標70%に対して約60%にとどまり、実は「国の対策が十分に機能している」とは言い切れない状況です。


🏥 この記事の3つのポイント
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国の目標と現実のギャップ

2023年度の特定健診実施率は過去最高の59.9%を記録したが、国が定める目標値70%には届かず、特定保健指導は27.6%と目標45%に大きく開きがある。

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2024年診療報酬改定の大きな変化

糖尿病・高血圧・脂質異常症の管理が「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料」に集約され、算定できなくなったケースが続出。内科クリニックの経営に直接影響が出ている。

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患者の約1割が治療を中断する現実

生活習慣病治療を受けている患者の約1割が年間で通院を中断しており、「費用負担」が理由の約25%を占める。医療現場での継続支援が国の施策の実効性を左右する。


生活習慣病対策における国の基本方針「健康日本21」とは


国が生活習慣病対策の根幹に置くのが「健康日本21」という国民健康づくり運動です。 現行の「健康日本21(第三次)」では、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」「社会環境の質の向上」「生活習慣の改善」を柱に据え、2040年度までの達成目標が設定されています。 単に個人の努力を促すだけでなく、社会環境の整備も国の責任として明記している点が特徴です。


関連)https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000967713.pdf


国は4つの基本方向を定めており、がん・循環器疾患・糖尿病COPDなどのNCDs(非感染性疾患)に対して、一次予防と重症化予防の両軸で施策を展開しています。 ポピュレーションアプローチ(国民全体への働きかけ)とハイリスクアプローチ(リスク保有者への個別介入)を組み合わせる方針です。


関連)1~3.pdf">https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11gs20.nsf/0/4dff2aee54ee4ca349257089000371da/$FILE/3-2-1~3.pdf


医療保険者・都道府県・企業が連携して健康増進を推進する仕組みが構築されており、それぞれの主体に役割が割り振られています。 つまり、国だけでなく各保険者が主体的に動く設計になっているということです。


関連)https://arukenkyo.or.jp/information/pdf/kirokusyu/02/01.pdf


医療従事者として「健康日本21の目標値」を把握しておくと、患者指導や保健事業の設計において根拠のある説明ができます。厚生労働省の公式ページでは最新の目標値と進捗が確認できます。


厚生労働省「健康日本21(第三次)」公式ページ — 基本方針・目標値・進捗データを確認できます


生活習慣病対策の柱「特定健診・特定保健指導」の実施状況と課題

特定健診・特定保健指導は、2008年度に制度が始まって以来、生活習慣病対策における国の最重要施策の一つです。 2023年度の特定健診実施率は59.9%(過去最高)、特定保健指導の実施率は27.6%(過去最高)と改善傾向にあります。 制度開始から15年で特定健診実施率は21.0ポイント、特定保健指導実施率は19.9ポイント上昇しました。


関連)https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2025/013913.php


しかし、国が定める目標値(特定健診70%以上、特定保健指導45%以上)には依然として大きな隔たりがあります。 数字を実感するなら、特定健診は「対象者5,210万人のうち約3,123万人が受診」という規模です——残り約2,087万人は受診できていない計算になります。


関連)https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2025/013913.php


保険者別の格差も見逃せない点です。健保組合(82.9%)・共済組合(82.6%)が高水準の一方、市町村国保は38.2%と半分以下にとどまっています。 これは、対象者の属性や保険者の体制によって支援の質に大きなバラつきがあることを示しています。


関連)https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2025/013913.php


特定保健指導の対象者は約519万人ですが、実際に指導を終了したのは約143万人(27.6%)のみです。 残り7割超の対象者が指導を受けられていない現状は、医療従事者が認識すべき重要な課題と言えます。


関連)https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2025/013913.php


特定健診・保健指導ポータルサイト — 2023年度特定健診・特定保健指導実施状況の詳細データ


生活習慣病対策に関する2024年診療報酬改定の要点と現場への影響

2024年6月以降、糖尿病・高血圧症脂質異常症を主病とした患者への「特定疾患療養管理料」の算定が不可能となりました。 これは内科クリニックを中心に直接的な減収をもたらす変更であり、医療現場への影響は大きいです。


関連)https://tenshoku.doctor-navi.jp/blog/20240419/19266/


代わりに「生活習慣病管理料(I)」「生活習慣病管理料(II)」への移行が求められています。 点数は、生活習慣病管理料(I)が脂質異常症610点・高血圧症660点・糖尿病760点と、それぞれ40点引き上げられました。 一方で、療養計画書の作成と患者への説明・署名取得が算定要件となっており、医師の業務負担増という面も否定できません。


関連)https://m-assets.com/lp/clinic/blog/lifestyle-disease-2026-revision


改定のポイントを整理するとこうなります。


  • 🔴 特定疾患療養管理料(糖尿病・高血圧・脂質異常症)→ 2024年6月以降算定不可
  • ✅ 生活習慣病管理料(I)へ集約(脂質異常症610点・高血圧症660点・糖尿病760点)
  • 📋 新設の生活習慣病管理料(II)は333点、検査等を出来高算定できる
  • 📝 療養計画書の作成+患者署名が必須の算定要件
  • 🔄 2026年改定でさらなる見直しが予定されている


さらに2026年改定では療養計画書の負担軽減や検査要件の調整が論点として挙がっており、引き続き制度変化への注視が必要です。 変わり続ける算定要件を把握するためには、最新の改定情報をこまめに確認する習慣が重要です。


関連)https://m-assets.com/lp/clinic/blog/lifestyle-disease-2026-revision


税理士による生活習慣病管理料2026見直し解説 — 内科クリニック経営への影響と実務対応を詳述


生活習慣病対策で国が見落としがちな「治療中断」問題の実態

通院している患者に指導を続けることが、国の生活習慣病対策の実効性を支える現場の基盤です。しかし、実態はシビアです。


生活習慣病の治療を受けている患者のうち、約1割が年間で通院を中断しています。 糖尿病に限った調査では、通院中断割合が10%台に達するとされています。 厚生労働省の研究班が明らかにした、全国規模の調査結果です。


関連)https://dmic.jihs.go.jp/content/dm_jushinchudan_guide43_e.pdf


治療を中断する最大の理由は「通院の手間」であり、「費用負担」が理由の約25%を占めます。 年収400〜800万円未満の世帯では通院の手間を理由とする中断が35%に上るというデータもあります。


関連)https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026746.php


一方で、希望もあります。適切な診療支援を行うと、治療中断率は62%も減少できるという研究結果があります。 月1回の受診時に患者の状況をきちんと確認し、生活習慣の改善点を丁寧にフォローするだけで、中断リスクを大幅に下げられるということです。


関連)https://dm-net.co.jp/calendar/2014/021882.php


  • 💊 糖尿病・高血圧の通院中断率:年間約10%
  • 💬 中断理由の約25%が「費用負担」
  • 🤝 診療支援を行うことで治療中断率を62%削減可能
  • 📱 遠隔診療(オンライン診療)を活用したい患者が過半数に達するとのデータもある


患者が「通院の手間」を理由に中断するケースには、オンライン診療の活用が有効です。 厚生労働省も医療DXの一環としてオンライン診療の推進を後押ししており、クリニック側で導入を検討する価値は十分あります。


関連)https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026746.php


厚生労働科学研究「糖尿病受診中断対策包括ガイド」— 通院中断の実態データと介入方法を詳解


生活習慣病対策の「国の施策」を実臨床でどう活かすか:医療従事者の独自視点

国が定める施策は「制度の枠組み」ですが、それを実際の患者変容につなげるのは現場の医療従事者です。ここに視点の転換があります。


健康日本21や特定健診・保健指導の目標値は、国が掲げる「集団への目標」であって、目の前の1人の患者に直接適用できるものではありません。 大切なのは、国の施策が示す「データの傾向」を読み取り、自分が関わる患者層にどんなリスクが集中しているかを把握することです。


関連)https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000967713.pdf


例えば、市町村国保の特定健診受診率が38.2%という数字は、「在宅療養患者や無職の方ほど健診機会が少ない」という現実を示しています。 これは訪問看護師・ケアマネジャー・地域包括支援センターのスタッフが「健診未受診者への声かけ」を担う重要性を示すデータと読み替えられます。


関連)https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2025/013913.php


また、2026年改定に向けた生活習慣病管理料の見直し議論では「かかりつけ医機能」の評価が焦点の一つです。 患者の生活背景・服薬状況・受診継続性を把握している医療従事者が、制度変化に対してもっとも有利なポジションに立てるということです。


関連)https://m-assets.com/lp/clinic/blog/lifestyle-disease-2026-revision


施策・指標 国の目標 2023年度実績 医療現場での意味
特定健診実施率 70%以上 59.9%(過去最高) 約40%が未受診。患者への声かけで受診率底上げが可能
特定保健指導実施率 45%以上 27.6%(過去最高) 対象者の7割超が未指導。リスク保有者の把握が急務
糖尿病通院中断率 低減 約10%(年間) 支援で62%削減可能。継続フォローに投資する価値あり
生活習慣病管理料算定 普及促進 移行期(2024年〜) 療養計画書の作成フローを標準化することが収益安定の


制度の理解を深めることは、患者へのより良い説明につながります。 「国がこういう方針だから、あなたの健康管理でもこの点を一緒に確認しましょう」という形で、患者への説得力ある指導が実現します。


関連)https://m-assets.com/lp/clinic/blog/lifestyle-disease-2026-revision


国の施策を「義務」として受け取るだけでなく、患者との関係構築と医療の質向上のツールとして活用する視点が、これからの医療従事者に求められています。


関連)https://seikatsusyukanbyo.com/prevention/about.php


厚生労働省「外来医療の機能分化・強化等」資料 — 生活習慣病管理に関する2024年改定の詳細と方向性




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