視覚異常の訴えを軽視すると患者の視力が永久に失われる可能性があります。
妊娠高血圧症候群(HDP)に伴う視覚症状は、重症化の重要な警告サインです。日本産科婦人科学会のガイドラインでは、「目が見えにくい」といった訴えを要注意症状として挙げています。
関連)https://www.jsog.or.jp/citizen/5709/
具体的な症状としては以下のようなものがあります。
関連)https://www.kango-roo.com/learning/8545/
関連)https://doctork1991.com/2020/08/15/pregnancy-induced-hypertension/
関連)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/110_421.pdf
関連)https://medicaldoc.jp/cyclopedia/disease/d_female/di1547/
これらの視覚異常は子癇や子癇前症患者の27%に出現するという報告があります。つまり約4人に1人ですね。
関連)http://hospitalist.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-181114-fukuchiyama.pdf
視覚症状の出現は、発作の1~2時間前に起こることが多く、頭痛や血圧の急激な上昇と併せて観察されます。医療従事者は患者からの「目の見え方の変化」という訴えを決して軽視せず、即座に血圧測定と神経学的評価を行う必要があります。
関連)https://www.kango-roo.com/learning/8545/
症状が一過性で数分で消失する場合でも、それは疲れ目ではなく高血圧発作の予兆である可能性が高いです。患者教育において、「視界が暗くなる」「ブラインドを閉めるように見える」といった具体的な表現を用いて説明することで、早期の報告を促すことができます。
関連)https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=69044
妊娠高血圧症候群では、眼底検査により特徴的な所見が確認されます。高血圧性網膜症としてKeith-Wagener分類I~II度の変化が最も一般的で、網膜動脈の狭細化や動静脈交叉現象が観察されます。
関連)https://eye-tamura.com/hypertensive-retinopathy/
さらに重症例では以下の眼底変化が認められます。
関連)http://jglobal.jst.go.jp/en/public/201602255411222247
関連)https://doctork1991.com/2020/08/15/pregnancy-induced-hypertension/
関連)https://eye-tamura.com/hypertensive-retinopathy/
診断において重要なのは、眼底検査が正常であっても視覚症状がある場合、可逆性後部白質脳症(PRES)を疑うことです。PRESは後頭葉や頭頂葉の脳浮腫により皮質盲や視野欠損を生じますが、眼底には異常が認められません。頭部MRIのT2強調像で白質の高信号を確認することが診断の決め手となります。
関連)https://kashiwa-gomi-shikanaika.com/blog/post-67/
眼底検査のタイミングですが、重症妊娠高血圧症候群と診断された時点で速やかに施行すべきです。全身状態が悪化している症例では眼科的診察が限られることも多いため、産婦人科医が対面法による視野評価や直接検眼鏡による簡易眼底観察を行うことも有用です。
関連)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/110_421.pdf
患者が「視界の中心が見えにくい」と訴える場合、黄斑部病変を示唆します。黄斑部の瘢痕化は視力予後を左右するため、迅速な眼科コンサルトが必須ですね。
関連)https://doctork1991.com/2020/08/15/pregnancy-induced-hypertension/
日本産科婦人科学会:妊娠高血圧症候群の症状と注意点について詳しく解説
視力低下のメカニズムは主に3つの経路で説明されます。第一に、高血圧による網膜血管の損傷です。血圧上昇により網膜動脈は硬化し内径が狭くなることで、網膜への血液供給が不足します。これにより網膜虚血や出血が生じ、特に黄斑部が障害されると著しい視力低下をきたします。
関連)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/110_421.pdf
第二のメカニズムは脈絡膜循環障害です。妊娠高血圧症候群では脈絡膜の血流が低下し、網膜色素上皮の壊死や漿液性網膜剥離が発生します。脈絡膜は網膜外層への栄養供給を担っているため、その障害は直接的に視機能低下につながります。
関連)https://doctork1991.com/2020/08/15/pregnancy-induced-hypertension/
第三は中枢神経系の障害で、可逆性後部白質脳症(PRES)による皮質盲が代表的です。急激な血圧上昇により脳血管の自動調節能が破綻し、後頭葉を中心とした脳浮腫が生じることで視覚野が障害されます。この場合、眼底は正常でも視力低下や視野欠損が出現します。
関連)http://journal.kyorin.co.jp/journal/jsog-k/detail.php?-DB=jsog-k&-recid=5543&-action=browse
興味深いことに、子癇や子癇前症では視力障害が1~15%の患者に生じるとされています。これは比較的高い頻度ですね。
関連)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/110_421.pdf
視力低下の程度は原因により異なりますが、HELLP症候群に伴う滲出性網膜剥離や高血圧性脈絡膜症では一時的に失明に至ることもあります。ただし適切な治療により4ヶ月以内に完全回復する症例が多いです。
関連)https://academia.carenet.com/share/news/46701f85-e14e-4754-bc00-36d291a95642
医療従事者として把握すべきは、視力低下が単なる屈折異常ではなく、母体の重症化を示す全身状態の反映である点です。妊娠中の一過性の近視化(角膜浮腫や水晶体曲率の変化)とは明確に区別する必要があります。
関連)https://takeru-eye.com/blog/10182021-refractive-change-in-pregnancy/
治療の基本原則は「妊娠の終了」と「血圧コントロール」の2つです。眼科的な積極的治療は通常必要とされず、原因疾患の管理により視覚障害は速やかに回復します。
具体的な管理手順は以下の通りです。
1. 緊急血圧管理:視覚症状出現時は最高血圧160mmHg以上の重症高血圧を疑い、降圧療法を開始します
関連)https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=69044
2. 妊娠終了の判断:母体安全を最優先し、在胎週数にかかわらず分娩の適応を検討します
関連)https://academia.carenet.com/share/news/46701f85-e14e-4754-bc00-36d291a95642
3. 眼科コンサルト:眼底検査により網膜剥離や出血の有無を確認し、視力予後を評価します
関連)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/110_421.pdf
4. 神経学的評価:頭部MRIによりPRESの診断を行い、抗けいれん薬投与を検討します
関連)https://kashiwa-gomi-shikanaika.com/blog/post-67/
視力予後は一般的に良好で、網膜・脈絡膜の瘢痕化が黄斑部にかからなければほぼ完全に回復します。出産後の血圧低下とともに、漿液性網膜剥離は数日から数週間で自然吸収されることが多いです。
関連)https://doctork1991.com/2020/08/15/pregnancy-induced-hypertension/
ただし患者への説明では注意が必要です。視力回復までには時間がかかる場合があり、焦りや不安を軽減するため「多くは数ヶ月以内に回復する」という具体的な期間を示すことが有効ですね。
妊娠終了後も定期的な眼科フォローアップが推奨されます。特に黄色混濁病巣を認めた症例では、瘢痕化の程度を確認するため出産後1~3ヶ月時点での眼底再検査が望ましいです。
予防的介入としては、妊娠初期からの血圧管理と定期的なスクリーニングが重要で、リスク因子(初産、多胎、肥満、糖尿病合併など)を持つ妊婦には特に注意深い観察が必要です。
効果的な患者指導には、具体的で理解しやすい表現を用いることが鍵となります。「目が見えにくい」という曖昧な訴えでは重症度判断が困難なため、以下のような具体的症状を例示して説明します:
関連)https://www.jsog.or.jp/citizen/5709/
これらの症状は「疲れ目」として片付けられがちですが、妊娠高血圧症候群の文脈では危険な兆候です。患者には「数分で治っても必ず報告する」という行動を徹底させます。
関連)https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=69044
指導のタイミングとしては、妊娠20週以降の定期健診時が最適です。この時期から妊娠高血圧症候群のリスクが高まるため、毎回の診察で「目の見え方に変化はないか」を確認します。
また家庭血圧測定を指導する際、視覚症状出現時の測定を強調します。「視界がおかしいと感じたらすぐ血圧を測り、180/110mmHg以上なら即座に連絡する」という明確な基準を示すことで、患者の自己管理能力を高められますね。
関連)https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=69044
オンライン眼科:妊娠高血圧症候群の眼症状について画像付きで詳細に解説
視覚症状が出現した場合の受診タイミングも具体的に指示します。
📞 即座に連絡すべき症状
🏥 翌日受診でよい症状
未受診妊婦や健診間隔の長い妊婦では、視覚症状が見逃されやすいため、初診時に徹底した教育が必要です。母子健康手帳に「目の異常チェックリスト」を記載するなど、視覚化したツールの活用も効果的でしょう。
関連)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10728274&contentNo=1
多くの眼合併症は可逆的で長期的な視力障害を残さないという良好な予後が報告されています。漿液性網膜剥離は出産後の血圧正常化に伴い自然吸収され、視力も元のレベルに戻ります。可逆性後部白質脳症(PRES)による皮質盲も、適切な血圧管理により完全回復することが多いです。
関連)http://journal.kyorin.co.jp/journal/jsog-k/detail.php?-DB=jsog-k&-recid=5543&-action=browse
ただし注意すべき例外もあります。黄斑部に瘢痕が残った場合、永続的な視力低下や変視症(物が歪んで見える)が残存する可能性があります。また網膜動脈閉塞症や虚血性視神経症など、血管閉塞性の合併症を生じた場合は視力予後が不良です。
関連)https://eye-tamura.com/hypertensive-retinopathy/
長期的な視機能モニタリングとしては、出産後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の時点での眼科受診が推奨されます。特に重症例では眼底写真を撮影し、経時的変化を記録することが有用ですね。
再発予防の観点では、次回妊娠時のリスク評価が重要です。妊娠高血圧症候群の既往がある女性は、次回妊娠でも再発率が高く(約20~30%)、視覚合併症のリスクも上昇します。そのため妊娠前カウンセリングで以下の点を指導します。
✅ 妊娠前の準備
✅ 次回妊娠中の管理
円錐角膜などの既存の眼疾患を持つ妊婦では、妊娠中にホルモン変化により角膜が軟化し病状が進行することがあります。このような症例では角膜形状解析を用いた慎重な経過観察が必要です。
関連)https://takeru-eye.com/blog/10182021-refractive-change-in-pregnancy/
医療従事者として覚えておくべきは、視覚症状の有無が母体予後の指標となる点です。視覚異常を早期に捉え適切に対応することで、重篤な合併症(子癇、脳出血、HELLP症候群)への進展を防ぐことができます。多職種連携、特に産婦人科と眼科の緊密な協力体制が患者の視力と生命を守る鍵となりますね。
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