臀部の皮疹を見落とすと診断が数週間遅れます。
抗MDA5抗体が陽性の場合、確定病名は「皮膚筋炎」となります。より詳しくは、筋症状のみられない皮膚筋炎である「無筋症性皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis:CADM)」に特異的な自己抗体です。
関連)https://data.medience.co.jp/guide/guide-06050062.html
レセプト点検の実務では、抗MDA5抗体陽性が確認された場合、皮膚筋炎の確定病名に加えて間質性肺炎の確定病名も併記することが推奨されています。これは本抗体陽性例の多くが急速進行性間質性肺炎(RP-ILD)を併発するためです。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5.html
成人皮膚筋炎における抗MDA5抗体の出現頻度は10~25%とされており、他の自己免疫疾患ではほとんど検出されません。つまり高い特異性を持つということですね。
関連)https://data.medience.co.jp/guide/guide-06050062.html
診断時には皮膚筋炎診断基準を満たす患者において、ELISA法により測定した場合に保険診療で算定できます。抗ARS抗体、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体とともに検査可能です。
関連)https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/00E380200
この自己抗体は当初、CADM患者の血清中に分子量140,000のバンドが認められたことから「抗CADM-140抗体」と呼ばれていました。その後、この抗体の対応抗原がmelanoma differentiation-associated gene 5(MDA5)であることが判明し、現在は「抗MDA5抗体」と命名されています。
関連)https://data.medience.co.jp/guide/guide-06050062.html
MDA5はウイルス2本鎖RNAを認識する分子で、自然免疫に関わる重要なタンパク質です。遺伝子解析からはWDFY4の変異との関与も報告されており、オッズ比は3.87とされています。
関連)http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu04-7.html
免疫沈降法による測定が診断に用いられますが、現在ではELISA法も広く利用されています。検査結果が陽性の場合、速やかに専門医への紹介が必要です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412204880
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎関連間質性肺疾患の6ヶ月死亡率は35.2%と報告されています。また別の研究では1年以内の死亡率が約30%と極めて予後不良です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402227299
死亡した患者の78%が抗MDA5抗体陽性であり、本抗体が死亡率の最も強い予測因子であることが示されています。主な死因はILDに直接関連する呼吸不全で、抗MDA5抗体陽性患者の92%を占めます。
関連)http://showa-u-rheum.com/2021/10/4143/
診断後1週間で死亡した症例も報告されており、数日から数週間で急速に呼吸不全が進行します。強力なステロイド剤や免疫抑制剤投与などに対しても治療抵抗性です。
この致死率の高さが基本です。特に急速進行性間質性肺炎に至り、呼吸不全のために命を落とすリスクが非常に高い病態を呈することがアジア人において知られています。
関連)https://academia.securite.jp/donation/detail?c_id=17
予後不良因子としては、抗MDA5抗体陽性以外に高齢、SpO2<95%、CRP≧1mg/dL、フェリチン≧500ng/dL、KL-6≧1000U/dLなどが報告されています。より低い基準値として、血清フェリチン値450 ng/mL以上、PA-aO2 30 mmHg以上も有意に生存率が低いことが示されています。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-18K08419/18K08419seika.pdf
抗MDA5抗体陽性例では、血管障害を示唆する特徴的な皮疹が診断の重要な手がかりとなります。逆ゴットロン徴候(手指屈側や手掌の鉄棒まめ様皮疹)が代表的です。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5.html
滲出性紅斑、紫斑、皮膚潰瘍といった血管障害を思わせる皮疹が、他の皮膚筋炎と比較し有意に合併頻度が高いことが特徴です。臀部も皮疹の好発部位の一つで、この部位の観察が診断の遅れを防ぐ鍵となります。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/ohter/032.html
ゴットロン徴候にも様々な所見が認められますが、滲出性紅斑や紫斑、潰瘍化の傾向があるものは抗MDA5抗体が陽性であることが多いとされています。むち打ち様紅斑、爪囲紅斑、顔面の浮腫性紅斑と褐色色素沈着なども認められます。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/hi.0000005487
皮膚科を受診した際にSpO2 94%程度の軽度低下でも、上記のような特徴的皮疹があれば速やかに抗MDA5抗体の測定を検討すべきです。診断のわずかな遅れが致死的になる疾患だからです。
関連)https://kashiwa-gomi-shikanaika.com/blog/post-683/
ごくまれに皮膚症状に先行して急速進行性間質性肺炎を発症する症例もあるため、急速に増悪する間質性肺炎では本抗体陽性を疑い速やかに測定することが重要です。呼吸器症状が認められなくても、胸部HRCTにより下肺野の浸潤影もしくはすりガラス様の陰影が認められる場合は要注意ですね。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5.html
抗MDA5抗体陽性で急速進行性間質性肺炎を伴う症例には、可及的速やかに多剤併用免疫抑制療法を開始することが推奨されます。診断時に間質性肺炎が重症でなくても、期を逃さずに治療を開始するべきです。
関連)https://ryumachi.umin.jp/clinical_case/DM_PM.html
多剤併用免疫抑制療法は、高用量ステロイド(GC)、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンまたはタクロリムス)、シクロホスファミドパルス(IVCY)を組み合わせます。従来治療と比べて死亡率を改善させ、6ヶ月死亡率は従来群28.6%に対し多剤併用群75.0%と報告されています。
関連)http://showa-u-rheum.com/2020/12/3889/
治療抵抗性の症例に対しては、血漿交換療法を追加することで救命率を改善できる可能性があります。免疫グロブリン静注療法(IVIG)も併用される場合があります。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.24733/pd.0000004082
治療効果の判定には、抗MDA5抗体価の変動だけでなく、臨床症状、画像所見、血清フェリチン値、KL-6、SpO2などを総合的に評価します。フェリチンはその日の内に結果が出るため、病勢マーカーとして有用です。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5-notice.html
皮膚筋炎では複数の筋炎特異的抗体が知られており、それぞれ臨床的意義が異なります。抗ARS抗体は皮膚筋炎の診断に有用で、ステロイド薬の減量で再燃を繰り返す傾向があります。
関連)https://sato-nou.com/kougenbyou-kensa/
抗TIF1-γ抗体は悪性腫瘍の合併を示唆するため、がんの検査が必要となります。抗Mi-2抗体は比較的軽症の経過をたどることが多いとされています。
関連)https://sato-nou.com/kougenbyou-kensa/
一方、抗MDA5抗体は重症度の指標として位置づけられ、急速進行性間質性肺炎の高リスクを意味します。これら4つの抗体は皮膚筋炎を疑った時に保険診療で検査可能です。
関連)https://sato-nou.com/kougenbyou-kensa/
抗ARS抗体陽性間質性肺疾患では寛解維持期の免疫抑制薬が重要ですが、抗MDA5抗体陽性例では寛解導入期の多剤併用免疫抑制治療が最も重要となります。治療戦略が大きく異なるということですね。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_13918
抗体のタイプによってゴットロン徴候の性状も異なり、角化が主体であるものは抗ARS抗体、丘疹性変化で炎症が強いものは抗TIF1抗体、滲出性紅斑や紫斑・潰瘍化の傾向があるものは抗MDA5抗体が陽性であることが多いです。この違いを覚えておけばOKです。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/ohter/032.html
抗MDA5抗体価は治療効果のモニタリングにも利用されますが、いくつかの注意点があります。従来Index値が100以上と報告されていた患者では、抗体価の変動が正しく反映されません。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5-notice.html
治療効果の判定には抗体価の変動だけでなく、臨床症状、画像所見、血清フェリチン値、KL-6、SpO2などを総合的に評価することが必要です。単一の指標に頼ると判断を誤る可能性があります。
関連)https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/products/msas/mda5-notice.html
血清フェリチンは病勢マーカーとして有用ですが、一部の患者では長期間値が下がらず、これを指標に治療をしていると過剰治療になっている懸念もあります。成人Still病ほどの極端な高値ではないものの、フェリチンやIL-18が高値になることが知られています。
抗MDA5抗体の測定には免疫沈降法が用いられますが、ELISA法も広く利用されています。検査の実施には皮膚筋炎診断基準を満たすことが前提となります。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412204880
医療生物学研究所の抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎診断ガイドでは、診断時の皮疹の特徴や検査実施のタイミングについて詳しい情報が提供されています。
メディエンスの検査ガイドには、抗MDA5抗体(抗CADM-140抗体)の臨床的意義と測定方法について実務的な解説があります。
日本医事新報社の治療ガイドでは、皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の治療プロトコルについて、抗体タイプ別の戦略が解説されています。