75歳以上の高齢患者に「140/90未満でいい」と伝えていると、JSH2025では管理不十分とみなされ脳卒中リスクを見逃す可能性があります。

JSH2019では75歳未満は130/80未満、75歳以上は140/90未満と区別されていました。 今回の改訂でその区別が廃止され、より一貫したガイドラインへと整理されました。
関連)https://tanno-naika.jp/blog/post-1296/
以下の表に、JSH2019とJSH2025の主な変更点をまとめます。
| 項目 | JSH2019 | JSH2025 |
|---|---|---|
| 75歳未満の目標(診察室) | 130/80mmHg未満 | |
| 75歳以上の目標(診察室) | 140/90mmHg未満 | 130/80mmHg未満(原則) |
| 糖尿病・CKD合併 | 130/80mmHg未満 | |
| 家庭血圧の目標 | 125/75mmHg未満(75歳未満) | 125/75mmHg未満(全年齢原則) |
| 脳血管障害患者 | 140/90mmHg未満 | 130/80mmHg未満(個別判断) |
つまり、管理のシンプル化が最大の変更点です。 ただし「個別性への配慮」は依然として求められており、数値の統一が即「全員に同じ治療をする」を意味するわけではありません。
関連)https://www.carenet.com/news/general/carenet/61350
メディアでは「全年齢で130/80未満に統一」と報じられましたが、ガイドライン本文には重要な注釈が付いています。 「忍容性のある患者においては」「副作用や有害事象に留意して個別に判断する」などの条件が明記されており、一律適用は意図されていません。
関連)https://fukitaclinic.com/65ht/4229/
これは実臨床に関わる大きなポイントです。
特に以下のような患者では、130/80未満を目標とした積極的な降圧に慎重な判断が必要です。
条件付きであることが原則です。 「130/80未満に統一された=高齢者にも積極的に下げる」という理解は、ガイドライン誤読につながります。
関連)https://credentials.jp/2026-01/special/
CKD患者や脳血管障害患者の管理に詳しい文献として、日本腎臓学会・日本脳卒中学会の連携ガイドラインも参照することをお勧めします。
高齢者とCKD患者における降圧目標の注意点|土曜会メディカルニュース
JSH2025では家庭血圧の重要性がさらに強調されています。 診察室血圧だけで管理目標の達成を判断することは、白衣高血圧や仮面高血圧を見落とすリスクがあります。
家庭血圧と診察室血圧の違いを整理するとこうなります。
| 種類 | 診察室血圧(正常) | 家庭血圧(正常) | 判断 |
|---|---|---|---|
| 真性高血圧 | 140/90以上 | 135/85以上 | 治療必要 |
| 白衣高血圧 | 140/90以上 | 135/85未満 | 経過観察 |
| 仮面高血圧 | 140/90未満 | 135/85以上 | 治療必要(見逃し注意) |
| 非高血圧 | 140/90未満 | 135/85未満 | 治療不要 |
特に仮面高血圧は診察室血圧だけでは発見できません。 診察室血圧が正常値でも家庭血圧が135/85以上なら治療が必要です。 見逃しが続くと脳卒中・心筋梗塞リスクが蓄積します。
関連)https://ookubo-clinic.com/blog/1727/
家庭血圧測定の推奨方法は「朝(起床後1時間以内、朝食前、降圧薬服用前)と夜(就寝前)に各2回測定し、その平均値を記録する」方法が標準です。 患者への指導時にこの手順を伝えることで、より正確な管理目標の達成状況が把握できます。
関連)https://nobonoclinic.jp/whitecoathtn/
家庭血圧と白衣高血圧の重要性|のぼのクリニック(家庭血圧活用の解説)
高齢者への降圧治療は「目標値の統一」と「個別化」が両立しなければなりません。 JSH2025では75歳以上も原則130/80未満を目指しますが、「一律に下げるのではなく、副作用や有害事象に配慮する」と明記されています。
関連)https://www.carenet.com/news/general/carenet/61350
意外ですね。
高齢者で特に注意が必要なのは、以下の3点です。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_10077
フレイルのある高齢患者に対し、画一的に降圧薬を増量することは、ガイドラインの精神に反します。 「数値を下げれば良い」ではなく、QOLを維持しながら心血管イベントを防ぐ視点が重要です。
関連)https://www.do-yukai.com/medical/193.html
要介護高齢者向けの実践指針については、日本老年医学会の文書が参考になります。
要介護高齢者における降圧療法の適正化に関する実践的指針|日本老年医学会(PDF)
JSH2025では、生活習慣改善(非薬物療法)の重要性が従来以上に強調されています。 降圧薬の前に、または降圧薬と並行して実施する生活習慣介入は、達成目標値に向けた土台です。
これは使えそうです。
主な非薬物療法の推奨内容は次のとおりです。
関連)https://tanno-naika.jp/blog/post-1296/
生活習慣介入だけで収縮期血圧を10〜20mmHg程度改善できるケースもあります。 降圧薬を検討する前段階として、まず生活習慣の評価と指導を体系的に行うことが、JSH2025でも基本原則として示されています。
関連)https://fukitaclinic.com/65ht/4229/
患者への生活習慣指導に役立つ詳細な解説は、以下の専門情報ページが参考になります。
2025年最新版・循環器専門医が解説する高血圧の目標値とガイドライン|丹野内科(非薬物療法のポイントも解説)
ガイドラインの目標値が更新されるたびに議論になるのが「測定方法の標準化」です。 実は、診察室での血圧測定が不適切だと、管理目標の達成判定そのものが意味をなしません。
関連)https://nigawa-shinryousho.com/column/column-3643/
診察室血圧は環境要因で容易に5〜10mmHg変動します。 白衣効果による上昇、測定前の会話、カフサイズの不一致、測定姿勢の不統一などが主な誤差要因です。
関連)https://nigawa-shinryousho.com/column/column-3643/
医療従事者が実臨床で確認すべき測定精度のチェックポイントは以下のとおりです。
正確な測定が条件です。 どれほど優れたガイドラインも、測定値の精度が低ければ適切な管理につながりません。
関連)https://nigawa-shinryousho.com/column/column-3643/
特に外来では時間的制約から1回測定で終わりがちですが、患者への家庭血圧記録の習慣化と組み合わせることで、測定精度の問題を補える実用的な対策です。 家庭血圧手帳の活用や、スマートフォン連携型血圧計の導入も選択肢に入れてみてください。
関連)https://nobonoclinic.jp/whitecoathtn/
全年齢で130/80mmHg未満を目標に『高血圧管理・治療ガイドライン2025』解説|CareNet(改訂の詳細な背景と臨床的意義)