
荷役作業におけるリスクアセスメントは、物流現場での労働災害を未然に防ぐ重要な手法です 。陸運業では労働災害の約7割が荷役作業時に発生しており、特に墜落・転落による死傷災害率が高いことが報告されています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/121121-05.pdf
厚生労働省が示すリスクアセスメントの流れは以下の段階で構成されます :
リスクアセスメントの実施時期は、設備や作業方法を新規採用・変更した場合、労働災害が発生した場合などが該当します 。しかし、まずは「危ないと思われる作業・作業場所」を対象として、できるところから始めることが推奨されています。
危険性の特定では、作業単位で発生しうる災害を洗い出すことが重要です 。荷役作業で特に注意すべき危険性として以下が挙げられます:
墜落・転落リスク 🔻
フォークリフト関連災害 🚛
実際の災害事例では、850kg/個のドラム缶をフォークリフトで取り出す際に荷が落下し、作業者が下敷きになって死亡した事例が報告されています 。この事例では、フォークリフトで持ち上げた荷物が不安定だったこと、作業計画がなく作業指揮者もいなかったことが原因として挙げられました。
参考)https://fa-products.jp/column/cargo-handling-safety/
情報収集では、作業手順書や機械の取扱説明書に加え、過去の災害事例やヒヤリハット事例が重要な参考資料となります 。これらの情報を基に、現場の職長や作業者も参加して危険性を特定することで、より実践的なリスクアセスメントが可能になります。
リスクの見積りには、マトリクス法を用いた評価が広く採用されています 。この手法では、「重篤度」と「可能性」の2つの軸でリスクを評価し、対策の優先度を決定します。
重篤度の区分 📊
可能性の区分
マトリクス表により、リスクレベルは以下の3段階に分類されます。
例えば、「作業者がパレットに足を乗せた時、フォーク上のパレットが傾き転落する」ケースでは、重篤度「致命的・重大(×)」、可能性「可能性が高い(×)」として、リスクレベルⅢの「直ちにリスク低減措置を講ずる必要がある」と評価されます 。
リスク低減措置は、法令遵守を前提として以下の優先順位で検討します :
①本質的対策(最優先) 🎯
②工学的対策 🏗️
参考)https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/001723276.pdf
③管理的対策 📋
④個人用保護具の使用 🦺
参考)https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000094024.pdf
実際の好事例として、平ボディトラックに「側あおり」を足場とする「あおり水平装置」を導入し、荷台上での安全な足場を確保した事例があります 。また、手すり付き荷台用ステップの利用や、あおりへの簡易作業床設置も効果的な工学的対策として実践されています 。
参考)https://akrobat.jp/archives/column/niyakusagyou
従来のリスクアセスメントに加えて、現場特有の状況を考慮した独自の安全管理手法が重要です。特に注目すべきは「荷役時間の見える化」による予防的アプローチです 。
参考)https://www.hacobell.com/media/cargo-handling-operation
時間管理による安全向上 ⏰
荷役作業時間の長期化は作業者の疲労蓄積を招き、注意力低下による事故リスクを高めます。バース予約システムやトラック予約受付システムの導入により、荷役作業時間を短縮し、作業者の負担軽減を図ることができます 。
心理的安全要因の考慮 🧠
荷台作業では「高さがそこまで高くない」という心理的安心感から、危険な作業を安易に行いがちです 。この心理的要因を踏まえ、作業前の危険性認識教育や、定期的な安全意識向上研修を実施することが効果的です。
動線設計による接触事故防止 🚶♂️
フォークリフトと人間の動線を明確に分離し、視認性の高い標識や警告システムを設置することで、接触事故を大幅に減少させることができます 。特に倉庫内では、動線整備により交通事故を防止し、安全かつ効率的な作業環境を確保できます。
参考)https://www.ts-base.net/column/20240122_1
料金体系による安全促進 💰
荷役作業に関する料金を明確化し、作業量に応じた適正な報酬体系を構築することで、過度な時間短縮プレッシャーを軽減できます 。「荷降ろし1tあたりの料金」や「1箱あたりの検品作業料金」を設定し、安全な作業時間を確保する仕組み作りが重要です。
これらの独自視点による管理手法は、従来のリスクアセスメントと組み合わせることで、より総合的で実効性の高い安全管理システムを構築できます。特に物流業界では、荷役作業の特殊性を理解した上で、現場に即した柔軟な安全対策が求められています。