NTX値が基準値内でも、骨折リスクが高い患者が存在します。
I型コラーゲンは生体内で最も多く存在するコラーゲンであり、骨の有機基質の90%以上を構成しています。 そのコラーゲン分子のアミノ末端(N端)側に存在するらせん構造がほどけた「テロペプチド」部分と、ピリジノリン・デオキシピリジノリン分子の複合体が尿中NTXです。
関連)https://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/060948.html
つまり、骨吸収の過程で産生される断片が尿中NTXです。
破骨細胞が骨の表面でコラーゲンを分解する際、このテロペプチド-架橋複合体が血中に放出され、最終的に尿中へ排泄されます。 測定に使用するオステオマーク試薬はNTXに特異性の高いモノクローナル抗体を使用しており、I型以外のコラーゲン代謝物は認識しません。 骨以外の軟組織由来のコラーゲン代謝の影響をほとんど受けないため、骨吸収に対する特異性は高いといえます。
関連)https://www.city.fukuoka.med.or.jp/kensa/ensinbunri/enshin_35_x.pdf
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 由来 | I型コラーゲンのN端テロペプチド+ピリジノリン架橋 |
| 産生源 | 破骨細胞による骨吸収 |
| 検体 | 尿(早朝第2尿推奨)または血清 |
| 測定法 | CLEIA法・EIA法 |
| 特異性 | I型コラーゲン特異的(軟組織の影響少) |
尿中NTXの基準値は性別・閉経状況によって大きく異なります。 具体的には以下の通りです。
関連)https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/022735400
関連)https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/022735400
判定基準もただ「高値・低値」で評価するのではなく、複数のカットオフ値が設けられています。 骨折リスクのカットオフ値は54.3、骨量減少のカットオフ値は35.3 nmolBCE/mmol・CREです。 これが重要です。
関連)https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/026705400
さらに、骨吸収亢進の指標は55以上、副甲状腺摘出術の適応は200以上、悪性腫瘍(乳癌・肺癌・前立腺癌)の骨転移の指標は100以上とされています。 例えば数値200以上というのは、骨折リスクカットオフの約4倍にあたる高値であり、この段階では手術適応まで視野に入ります。
関連)https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/022735400
血清NTXの基準値は異なります。
血清NTX(BML社参考値)は、男性(40〜59歳)9.5〜17.7 nM BCE/L、閉経前女性(40〜44歳)7.5〜16.5、閉経後女性(45〜79歳)10.7〜24.0 nM BCE/L と、尿中と単位・数値が全く異なります。 尿中と血清の基準値を混同しないことが原則です。
関連)https://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/12205467
NTXを含む骨代謝マーカーは日内変動が大きいことが知られています。 特に尿中NTXは「朝に多く、徐々に減少する」という日内パターンを示します。
これは見落としやすいポイントです。
そのため、採取のタイミングが結果に直結します。 DPDやNTXでは早朝第2尿を用いることが原則とされており、随時尿でのデータは参考値にとどめるべきです。 もし午後に採取された尿でNTX値が基準値内に収まっていた場合でも、早朝第2尿で再測定すれば高値になる可能性があります。
関連)https://ijiri.jp/writing_lecture/radio/writing-lecture-016.php
治療効果判定の変化率を計算する際も、初回と2回目で採取条件が異なれば変化率が不正確になります。 「条件統一」が大前提です。
関連)https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/2016_09/002.pdf
また、腎機能が低下した患者ではクレアチニン補正の精度が低下するため、尿中NTXの解釈に注意が必要な場合があります。 腎機能低下患者にはその点を念頭に置いた上で評価することが求められます。
関連)https://www.beckmancoulter.co.jp/files/blog/customer_voice/vol36/Quality_Leaders_Digest_Vol-36.pdf
NTXの保険算定には明確な制限があります。
I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)とデオキシピリジノリン(DPD)(尿)は、以下の場合にのみ算定が認められています。
関連)https://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/060948.html
関連)https://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/060948.html
骨粗鬆症に対しては算定回数の制限があります。 「薬剤治療方針の選択時に1回、その後6ヶ月以内の薬剤効果判定時に1回」が原則であり、さらに「薬剤治療方針を変更したときは変更後6ヶ月以内に1回限り」算定できます。 この点数は包括156点(D008 25、生化学的検査(Ⅱ)判断料144点)です。
関連)https://data.medience.co.jp/guide/guide-04010041.html
つまり、適応外の病態でルーティン的に測定・算定すると査定対象になります。
単に骨密度が低いという理由だけでは算定できない点に注意が必要です。 査定を避けるには、診療録に算定根拠(薬剤治療方針の選択、副甲状腺手術前後の評価)を明記しておくことが推奨されます。
NTXを使った治療効果判定のフローは、治療開始前の測定、投与開始3〜6ヶ月後の再測定、そして変化率の算出という流れで行います。 変化率の評価では、治療開始時からのNTX値の減少が35%未満の場合は「効果あり」と判定し治療継続、35%以上の減少が確認されない場合は薬剤変更を検討するという基準が用いられています。
関連)https://maniwa-seikei.com/wp-content/uploads/2021/03/900817064cae98ce4593a9ba0a95917b.pdf
これは使えそうです。
一般的にX線検査(DXA)で骨密度変化を確認するには1〜3年かかりますが、骨代謝マーカーであるNTXは治療開始後わずか2〜3ヶ月程度で変化を評価できます。 これは患者への治療効果フィードバックとアドヒアランス向上に直結します。
関連)https://www.beckmancoulter.co.jp/files/blog/customer_voice/vol36/Quality_Leaders_Digest_Vol-36.pdf
臨床での重要な応用として、悪性腫瘍の骨転移モニタリングがあります。乳癌・肺癌・前立腺癌における骨転移の進行度は、NTX値100以上を目安に評価されます。 また、骨形成不全症(OI)の乳児では健常児よりNTX値が低値を示すことが研究で示されており、小児領域での活用も進んでいます。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-23791177/23791177seika.pdf
リセドロネートを投与した症例では、投与後わずか1ヶ月という早期に約半数で最小有意変化を超える効果が確認されたという報告もあります。 早期のアドヒアランス確認ツールとして、NTXは特に開業医レベルの外来診療でも十分に有効性が示せます。
関連)https://ijiri.jp/writing_lecture/radio/writing-lecture-016.php
*
以下に参考リンクを示します。I型コラーゲン架橋N-テロペプチドの基準値・保険算定・適応疾患の詳細確認に役立ちます。
「NTXの基準値・算定条件・臨床的意義(SRL)」。
https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/022735400
「骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド(日本骨代謝学会)」。
http://www.josteo.com/data/publications/guideline/2018_02.pdf
「骨代謝マーカーの実践的活用法(栄研化学)」。
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/2016_09/002.pdf